
わが社もそろそろ、ペーパーレス化を検討しないとなぁ・・
近年、リモートワークやテレワーク、Web会議といったペーパーレスな働き方が主流となりつつあります。
紙書類を電子化するには多大な手間がかかりますが、企業がペーパーレス化するメリットは大きいです。
話題のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するための第一歩としてもおすすめのペーパーレス化。


この記事ではペーパーレス化の現状やメリット・デメリット、成功する進め方や実際の事例について解説します。
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは紙媒体を電子データとして保存、活用することで紙資料を無くすこと(paper less)を指します。
ビジネスシーンでペーパーレス化を進めることで、紙の使用量や経費の削減、地球環境の保護、業務の効率化や生産性の向上が実現します。
ペーパーレス化が求められる背景
日本では労働力の減少に伴い、限られた労働力を最大限効率的に活用することが求められています。
ペーパーレス化は紙書類の管理の手間を減らし、電子化によって資料へのアクセスを容易にします。
仕事の効率性や生産性が上がるだけでなく、保管スペースの削減等やリモートワークの実現など多くのメリットがあるペーパーレス化。
デジタル活用の意識の高まりとともに、企業の間でもペーパーレス化の取り組みが進んでいます。
ペーパーレス化推進の現状
必要性が叫ばれながらなかなか進んでこなかった企業のペーパーレス化。
そんな事態を大きく変えたのが2020年からのコロナショックでした。
出社が制限されるなかで、半強制的にペーパーレス化を進めざるを得なくなった企業。
実に7割以上の企業が2020年に社内のペーパーレス化を推進したという調査もあります。


働き方改革とペーパーレス化
働き方改革を推進する上でもペーパーレス化は避けて通れません。
コロナ禍でも出社しなければいけない大きな理由が、ペーパーレス化が進んでいないことでした。


ペーパーレス化を実現すれば従業員の働く場所をオフィスに制限しなくてもよくなります。
多くの企業がリモートワーク・テレワークを許容する中で、どこからでも仕事ができることは従業員のモチベーションにもつながります。
ペーパーレス化の対象となる書類
ペーパーレス化を「すべての書類が電子化した状態」と考える人もいます。
しかし、ペーパーレス化はすべての紙書類を取り除くことではありません。
紙で残すべき書類は紙で残し、電子化することで運用や管理が効率化する書類を見極めることが重要です。
「ビジネス文書」「会議資料」「パンフレットやカタログ」「チラシなどの販促物」といった書類や資料がペーパーレス化の対象となります。


ペーパーレス化を進める8つのメリット



なるほど。ペーパーレス化の概要はだいたい分かった。で、当社にどんなメリットがあるんだっけ?
ペーパーレス化のメリットには以下のようなものがあります。
- コストの削減が可能
- 業務の効率化ができる
- オフィスが省スペースで済む
- 紛失リスクを低減できる
- セキュリティを強化できる
- 多様な働き方を実現できる
- 企業イメージが向上する
- 環境を保護できる
ひとつずつ解説していきます。


ペーパーレス化のメリット1:コスト削減
ペーパーレス化すると以下のコストが必要なくなります。
- 用紙やトナー代
- プリンタのリース代
- プリンタのメンテナンス費用
- 紙書類の管理費用や管理場所のコスト
メールを使えば紙書類の郵送料も必要ありませんし、機密情報が記された書類廃棄のためのシュレッダーも不要になります。
オフィス機器にかかっていたコストや、書類を印刷するための人件費が削減できます。
ペーパーレス化のメリット2:業務効率化
紙の書類が必要になって探す場合、1枚ずつ紙を確認しなければなりません。
しかし、電子書類ならキーワード検索ですぐに見つけられます。
書類や資料へのアクセスやアップロード、共有も場所を選ばず可能です。
そのため、出勤時間や移動時間が削減されて効率的に仕事を進められます。
書類をバインダーにファイリングしたり、そのバインダーを整理したりするための手間もかかりません。
ペーパーレス化は業務効率を向上させ、生産性を高めます。
ペーパーレス化のメリット3:オフィスの省スペース化
印刷した紙書類は保管する必要がありますが、電子データならサーバー上に保管できます。
自社サーバーを運用するとしても、紙書類より省スペースで保管が可能です。
保管するためのバインダーや収納ボックスも必要ありません。
ペーパーレス化は保管コストを下げ、省スペース化を実現できます。
ペーパーレス化のメリット4:紛失・劣化のリスク低減
紙書類は時間が経つとともに劣化していきます。
紛失や火災、水害はもちろん、コーヒーをこぼすだけで資料が読めなくなることも。
しかし、電子データ化すれば上記のようなリスクを大きく減らせます。
電子データは経年劣化したり、コーヒーがこぼれて読めなくなったりしません。
電子データなら半永久的に保存できます。
紛失や劣化のリスクが低減できるのはペーパーレス化の大きなメリットです。
ペーパーレス化のメリット5:セキュリティの強化
ペーパーレス化することでセキュリティが強化されます。
紙書類の場合、鍵つきキャビネットで保管するなどの物理的なセキュリティ対策が必要です。
一方、電子化された書類はアクセス権限の制限が可能で、不正な持ち出しや文章改ざんを防止できます。
ペーパーレス化のメリット6:多様な働き方に対応
紙ベースの業務の場合、オフィスで文章を作成してプリントアウトしたり、ハンコによって承認や決済を行ったりしていました。
決済後に書類はファイリングし、物理的に保管しなければなりません。
ペーパーレス化を進めることで、時間や場所にとらわれることなく働けます。
テレワークやリモートワークといった働き方が可能になります。
多様な働き方に対応するため、ペーパーレス化は必須です。
ペーパーレス化のメリット7:企業イメージの向上
近年、企業は利益を追求するだけでなく、社会責任を果たすべきとする考え方が広まっています。
たとえば、CSR(Corporation Social Responsibility)は「企業の社会的責任」を指し、CSR経営を重視する企業も出てきました。
他にも、SDGsや環境保護、サスティナブル経営が取り上げられます。
ペーパーレス化は環境保護やサスティナビリティにつながり、社会的責任に取り組んでいるとアピールできます。
ペーパーレス化のメリット8:環境保護
ペーパーレス化によって書類を電子化し、紙を減らすことは環境保護につながります。
紙は木を原料としており、紙の生産は森林破壊の一因となっています。
紙の原料はベトナムやオーストラリア、南米などの森林資源に依存しています。
ペーパーレス化で紙を使わないことは環境保護に直結します。
ペーパーレス化を進める4つのデメリット
一方、ペーパーレス化を進める上では当然デメリットも理解しなくてはいけません。
ペーパーレス化のデメリットは以下の通りです。
- 導入費用が発生する
- 視認性が落ちる
- システムや機器の障害リスクがある
- ITリテラシーが必要


ペーパーレス化のデメリット1:導入費用がかかる
ペーパーレス化を導入するためには、電子化された書類を読む端末やデータを送受信するためのネットワークが必要です。
従業員へスマートフォンやタブレット、個人用パソコンを支給しなければなりません。
多くのデータを保管するなら、クラウドサービスやサーバーを契約することも求められます。
大量の紙書類を電子化するためのスキャナや工数も必要でしょう。
ペーパーレス化にはそれなりの導入費用が発生します。
ペーパーレス化のデメリット2:慣れるまでは生産性が落ちる
電子化された書類は拡大して読むことができますが、一方で全体像を把握することが難しくなるケースも。
大きな図面や字の細かい書類は、拡大することで画面に表示できる範囲が狭まります。
他にも、タブレットが1台しかない場合は複数の資料を見比べづらいです。
電子書類は視認性が落ちることがありますので注意しましょう。
ペーパーレス化のデメリット3:システムや機器の故障リスクがある
電子書類には紙のような経年劣化や破損はありませんが、書類を確認するための端末が故障したりサーバーが障害を起こしたりすることが考えられます。
サーバーがシステム障害を起こすと電子書類は確認できず、業務に支障をきたします。
障害やトラブルの度合いによっては、データが消失する最悪のケースもあり得ます。
最悪のケースに備えて、データのバックアップを頻繁に行いましょう。
他にも、複数の場所に分散して保存しておくなど対策を考えておくことが重要です。
ペーパーレス化のデメリット4:ITリテラシーが必要
電子化された書類を閲覧するのはパソコンやタブレットです。
パソコンやタブレットに不慣れな人にとって、ペーパーレス化は不便に感じられるかもしれません。
不便に感じるだけならまだしも、使用者のITリテラシーの欠如はセキュリティを低下させます。
ペーパーレス化を実施するには従業員全員のITリテラシー向上が必要です。
ペーパーレス化を成功させるための社内の進め方
ペーパーレス化の進め方について4ステップで解説します。


ステップ①:ペーパーレス化の目的を定め理解を深める
ペーパーレス化の目的をはっきりと定め、理解を深めましょう。
ペーパーレス化が進まない大きな原因は会社の制度や習慣です。
現場業務のプロセスを変更する必要があるため、従業員からの抵抗も想定されます。
そのため、予めペーパーレス化の必要性と目的を明確にして、従業員にも納得感を持ってもらうことが重要です。
まずは権限を持つ経営陣がペーパーレス化への理解を深め、その必要性と目的を全社に周知しましょう。
ステップ②:保存要件を確認
次に、各部署で取り扱っている文書の棚卸しを行い法令で定められている保存要件を確認しましょう。
紙での保存が必要な文書もあるので注意してください。
ペーパーレス化を一気に進めるのはハードルが高いので、段階を踏んで進めましょう。
まずは自社で使用している紙書類を電子化し、最終的にはほとんどの紙書類の電子化を目指してください。
ステップ③:ルールの構築
ペーパーレス化にはルールが必要です。
機密性やセキュリティの観点から文書管理ルールを取り決めましょう。
会社の規定として文書ルールを発表し、従業員全員が遵守するように教育を行ってください。
文書管理のマニュアル作成なども必要に応じて行いましょう。
ステップ④:ペーパーレス化の方法とツールの導入
ペーパーレス化の方法としてはスキャンが一般的です。
スキャンしたデータはフォルダ分けし、ラベリングを行ってわかりやすく分類します。
ペーパーレス化に伴いタブレットやノートパソコンの支給、各種ツールの導入を検討しましょう。
ネットワーク環境の構築も必要不可欠です。
Web会議ツールや電子署名、勤怠管理ツールを導入は一考の価値があります。
企業におけるペーパーレス化の成功事例4選
最近、多くの企業がペーパーレス化に成功しています。
代表的な成功事例を4つ紹介します。
成功事例1:税理士マッチポイント
税理士マッチポイントは高齢化が進む税理士業界において、クラウドシステムを導入してペーパーレス化を進めました。
会計システムの「マネーフォワード」やChatwork、Zoomを導入して業務をクラウド化しました。
会計事務所はどうしても紙で資料が送られてきますが、電子契約システム「CLOUDSIGN(クラウドサイン)」とORCソフト「DocuWorks9(ドキュワークス)」ですべての資料をPDF化しました。
事務所の一角にスペースを作り、「ここにしか紙の資料は置かない」と決めて、事務所に到着した書類はすぐPDF化しています。
多くの資料がペーパーレス化され、在宅ワークで業務がスムーズに行えるようになりました。
参考:https://cloudinitiative.jp/sapporo/matchpoints
成功事例2:東北コピー販売
コピー機販売会社がペーパーレス化した事例もあります。
東北コピー販売は何度となく紙文化からの脱却を図ってきましたが、そのたびに失敗してきました。
失敗の原因は、コピー機を使った業務改善を考えがちだったことです。
そこで、大胆にクラウドを導入して業務改善を図りました。
脱ハンコのルールを整備し、社内決済でハンコを使用しない環境を整えました。
第1フェーズ、第2フェーズと段階を踏んでクラウドを導入することで「情報共有」「コスト削減」「クラウドファースト」を実現しました。
現在では97%以上の情報がクラウドに移行しており、ペーパーレス化を実現しています。
参考:https://cloudinitiative.jp/koriyama/tohokucopysale
成功事例3:ライフコーポレーション
ライフコーポレーションは近畿圏や首都圏でスーパーマーケット「ライフ」を展開しています。
同社の店長会議には首都圏120名、近畿圏150名が参加しており、会議の資料も膨大な量になります。
そこで、タブレットを利用したペーパーレス会議システムを導入しました。
ペーパーレス化した店長会議では、毎月6万枚の資料の印刷費と人件費が削減されました。
ペーパーレス化前はモノクロ印刷で費用削減の努力をしていましたが、ペーパーレス化後は効果的に色を使用でき、情報を1ページに詰め込む必要もなくなりました。
参考:https://ecomeeting.jp/case/detail/000038.php
成功事例4:長野市
長野市では各種業務のシステム化、データベース化を行っていましたが、期待したほどのペーパーレス化になりませんでした。
そこで、大量の紙が必要となる会議資料に目をつけてペーパーレス化を行いました。
厚いファイル十数冊分の会議資料が必要な「政策会議」や「部長会議」で実証実験し、段階的にペーパーレス化が行われました。
結果、ペーパーレス会議システムの導入によって、1年間で14万枚の紙と300万円の印刷費用の削減に成功しました。
会議の準備もペーパーレス化前は約2時間かかっていましたが、ペーパーレス化後は平均して20分以内に完了するようになりました。
参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000152619.pdf
ペーパーレス化を推進する法制度の改正
電子帳簿保存法とは、煩雑な事務作業をIT技術によって効率化するために作られた法律です。
1988年に施行以来、IT技術の発展に対応しながら何度も改正されてきました。
しかし、電子帳簿保存法はルールが厳しく、全国の企業でほとんど導入が進みませんでした。
そこで2022年1月に大幅に要件が緩和されることになりました。
この改正により、企業はペーパーレス化を一気に進めやすくなると言われています。
詳しくは【2022年1月施行】電子帳簿保存法改正を図解でわかりやすく解説を参考にしてください。
ペーパーレス化はデジタル活用の第一歩。お気軽にお問い合わせください
ペーパーレス化は企業のデジタル活用の第一歩。
コストの削減、業務効率の向上、働き方改革、企業イメージの向上など多くのメリットがあります。
その一方で実現にはいくつものハードルがあるのも事実。
最適な目標設定の仕方やツール導入を失敗してしまうと、従業員からは不満の声が噴出します。
当サイト「BIZGROW」では、ペーパーレス化実現のための無料相談も承っています。
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3営業日以内にご返信いたします。
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