
クラウドERPがいいって聞くけど、実際よくわからないんだよね・・
この記事では、デジタルを活用した新規事業・人材育成のサポートを行っているBIZGROW編集部がクラウドERPのすべてを徹底解説します。
クラウドERPとは
クラウドERPとは何か、まずは「クラウド」と「ERP」に分けて解説します。
クラウドとは?


クラウド(cloud)は雲を指す言葉で、インターネット(雲)の向こう側のサービスを利用することから名付けられました。
クラウドとは、ユーザーがサーバーやストレージなどのインフラやソフトウェアを持たなくても、インターネットを経由して、サービスを必要なときに必要な分だけ利用できる仕組みです。
クラウドではハードウェアを購入したり、ソフトウェアをインストールしたりする必要がありません。
クラウドについて詳しくは【図解】クラウドとは?初心者でもわかりやすく解説をご覧ください。
ERPとは
ERPは「Enterprise Resource Planning」の頭文字を取った言葉で、日本語では「企業資源計画」と訳されます。
企業の資源とはヒト・モノ・カネ・情報を指し、これらを一元管理して有効活用する考え方をERPと呼びます。
最近では、財務会計や生産管理、販売管理といった企業の基幹業務をサポートする業務システムを指すことも多々あります。
クラウドERP/SaaS ERPとは?
クラウドERPとは、クラウド上で構築されるERPシステムのこと。
SaaS ERPとはクラウドERPの一種で、ERPシステム自体がSaaSの形態で提供されるERPのことです。
SaaSについて詳しくは【図解】SaaSとは?読み方や代表例、SaaS企業をわかりやすく解説をご参照ください。


クラウドERPとオンプレミスERPの違い
従来、ERPは大企業が高額な開発費用をベンダーに払って構築する「オンプレミスERP」が一般的でした。
しかし近年、クラウド技術やAPIの発展によって安価にERPが活用できるようになったのがクラウドERP。
オンプレミスERPは自分たちの業務に即した形に構築・カスタマイズできるのに対し、クラウドERPは安価に利用できる代わりにカスタマイズに制限があるといった特徴があります。
クラウドERPは、主に企業を中心に急速にシェアを拡大しています。


クラウドERPの導入状況と市場規模予測
クラウドERPの導入状況
2021年版の企業白書によると、全国の企業の内約4割がERPシステムを導入済み、約1割が導入検討中。
ERPシステムを導入済みの企業の内、クラウドERPを採用しているのは約2割となっています。


クラウドERPの市場規模予測
企業の導入状況だけ見るとまだまだ一般化しているとは言えないクラウドERPですが、今後は急速に市場が拡大することが見込まれています。


クラウドERP市場が急拡大する背景
クラウドERPが拡大する背景には、オンプレミスERPへの課題や不満があります。
オンプレミスERPは維持やメンテナンスコストの増大、柔軟性の欠如といった問題を抱えていました。
クラウド技術の発展によってERPシステムが圧倒的に短期間かつ低コストで導入できることから、今後市場規模が大きく拡大することが見込まれています。
クラウドERPの種類
クラウドERPの種類について解説します。
プライベートタイプ
プライベートタイプのクラウドERPは、特定のユーザーや企業のみを対象としたVPN接続や専用線などによる、セキュアなネットワーク経由で提供されるクラウドサービスのことです。
プライベートタイプのクラウドERPは、クラウド事業者からクラウドサービスの提供を受け、そこに自社独自のERPを構築したものを指します。
IaaSタイプのクラウドERPとも呼ばれます。
パブリックタイプ
パブリックタイプのクラウドERPはベンダーが提供するサービスをインターネットを経由して利用する形態で、月額料金制や従量課金制でサービスが利用できます。
カスタマイズ性は限られるものの、導入の労力とコストが圧倒的に安いことが特徴です。
SaaSタイプのクラウドERPとも呼ばれます。
SaaSについて詳しくは【図解】SaaSとは?読み方や代表例、SaaS企業をわかりやすく解説をご参照ください。
ハイブリッドタイプ
ハイブリッドタイプはプライベートとパブリックを組み合わせた形態で、それぞれの長所を活かすことで最適なシステムを目指します。
たとえば、機密情報はプライベートタイプで管理し、それ以外の情報管理はパブリックタイプを利用するといった形が考えられます。
他にも、本社ではオンプレミス、支社ではパブリックタイプを採用し、両者を連携させるの形態を2層ERPと呼びます。
クラウドERPのメリット
クラウドERPのメリットは大きく次の6つです。
- 導入期間やコストの削減
- 生産性の向上
- 安全性の向上
- 多様な働き方に対応
- 災害復旧に強い
- 経営資源の可視化
それぞれ、わかりやすく解説します。
クラウドERPのメリット1:導入期間やコストの削減
クラウドERPは自社でインフラを用意せずにすむため、導入にかかる労力や期間、コストを大幅に削減できます。
クラウドERPには初期費用が無料で、月額利用料だけのサービスも珍しくありません。
導入にまとまった費用が不要なのは、企業やスタートアップ企業にとって大きなメリットです。
システム運用もベンダーが行うため、導入企業はサーバーの保守やメンテナンスが必要なく、負担が小さいのが特徴です。
クラウドERPのメリット2:生産性の向上
「インターネット環境さえあれば利用できる」「リアルタイムに情報共有が可能」といったクラウドERPの特徴は、生産性向上に役立ちます。
クラウドERPはテレワークや在宅ワーク、外出先からのタブレットでも利用でき、時間や場所を選びません。
くわえて、リアルタイムに情報を共有できるため、迅速な判断にも役立ちます。
クラウドERPのメリット3:安全性の向上
パブリックタイプのクラウドERPは「自社でセキュリティを管理できない」「インターネットを経由する」といった点から、セキュリティが弱いと考えられることがあります。
しかし、大手のベンダーであれば最新の脅威に対応したセキュリティを備えており、安定稼働に十分な人材やコストを割いています。
そのため、オンプレミスのシステムよりはるかに安全性・安定性が高いと言えます。
クラウドERPのメリット4:多様な働き方に対応
クラウドERPはインターネット環境さえあればどこからでもアクセスできます。
在宅ワークやテレワーク、サテライトオフィスからの利用も可能で、多様な働き方に対応しています。
さらに、スマートフォンやタブレットからもアクセスできるため、社外から移動中にアクセスして情報を更新するといった使い方もできます。
クラウドERPのメリット5:災害復旧に強い
クラウドERPのサーバーはデータセンターに設置されているのが一般的です。
データセンターは地震だけでなく火災や停電にも強い構造になっており、自社でサーバーを保守するよりも安全にデータを守れます。
クラウドERPで情報を管理すればデータ消失リスクが低くなり、災害後の事業継続や復旧が容易に行えます。
また、自社からは離れた位置にあるデータセンターを活用することで、地震や津波などの極地的な災害による被害を分散できます。
クラウドERPのメリット6:経営資源の可視化
クラウドERPでデータを一元管理することで、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を可視化できます。
経営資源の可視化は迅速な意思決定や判断を助け、機動的な経営を可能とします。


クラウドERPのデメリット
クラウドERPのデメリットは5つです。
- 製品が多く選定が難しい
- オフライン環境では利用できない
- カスタマイズが困難
- サービスがベンダーに左右される
- 月額費用がかかる
クラウドERPのデメリット1:製品が多く選定が難しい
クラウドERP選定でもっとも多い悩みは「製品が多すぎてどれを選べばよいのかわからない」です。
業界に特化したクラウドERPは、その業種に必要な機能を網羅的に備えておりスムーズに導入できます。
次の章で、クラウドERPを導入する際に考えるべきポイントについてまとめています。
クラウドERPのデメリット2:オフライン環境では利用できない
クラウドERPはインターネット経由で利用するため、オフライン環境では利用できません。
何らかの理由でインターネットに接続できない環境の場合、基本的にクラウドERPは使えませんので注意しましょう。
クラウドERPのデメリット3:カスタマイズに制限がある
クラウドERPは、ある程度テンプレート化された形での提供となります。
そのため、オンプレミスERPとは違いカスタマイズ性に劣ります。
どうしても自社独自のERPが必要な場合は、オンプレミスのシステムも選択肢に入れましょう。
クラウドERPのデメリット4:サービスがベンダーに左右される
クラウドERPはハードウェアやサーバー、システムの管理をすべてベンダーが行います。
そのため、提供されるサービスのレベルはベンダーに左右されます。
ベンダーの質が低いと障害が起きたり、復旧に時間がかかったりすることもあります。
クラウドERPのデメリット5:月額費用がかかる
クラウドERPは月額料金制が発生し、毎月のランニングコストがかかります。
月額費用は利用する人数に左右されることが多いです。
事前に利用人数を算定し、ベンダーから見積もりを取って検討しましょう。


クラウドERPの選び方や比較するポイント6選
クラウドERPの選び方や、比較する6つのポイントについて解説します。
- 導入目的を達成できるか
- 会計を起点にする
- カスタマイズ性
- 操作性
- サポート体制と範囲
- 費用
クラウドERPの選び方1:導入目的を達成できるか
クラウドERPを選ぶときは、導入目的をはっきりさせておきましょう。
ERPの導入目的はヒト・モノ・カネ・情報といった企業内資源を一元的に管理することです。
導入前と比較すれば、ざまざまな点で経営の合理化を図ることが可能です。
帳簿、会計処理、販売管理、人材管理といった社内データが1カ所に集まるため、企業な資源が可視化できて迅速な経営判断につながります。
こういった目的を達成するため、自社に最適な製品を選ぶ必要があります。
クラウドERPの選び方2:会計を起点にする
クラウドERPを導入する際には、まず会計を起点にして考えましょう。
マーケティングから営業、販売管理、在庫管理、人事労務など、あらゆる業務は会計業務が終着点となります。
会計システムを起点に考えることで、全社的に最適な仕組みを構築することができます。
クラウドERPの選び方3:カスタマイズ性
クラウドERPはオンプレミスERPに比べて、カスタマイズ性に乏しいです。
しかし、クラウドERPの中でも拡張性に優れている製品があります。
APIを使うことによって、様々なサービスとの連携を容易にしている製品もあります。
拡張性に優れたクラウドERPは、社内体制やフローの変化に応じて柔軟に対応が可能です。
クラウドERPを選ぶときは、導入後の変化も踏まえて検討しましょう。
クラウドERPの選び方4:操作性
機能性が高くても使いにくいなら、業務の効率化や合理化にはつながりません。
直感的に操作しやすいユーザーインターフェースの製品を見極める必要があります。
無料トライアルやデモを行っているクラウドERPなら、導入前に操作性を確認できます。
現場で使用する従業員のことを考えて選定しましょう。
クラウドERPの選び方5:サポート体制と範囲
ITツールになれていない現場の場合、サポート体制はとても重要です。
「操作方法がわからない」「トラブルが発生した」などのケースは現場を混乱させ、仕事を遅延させます。
サポートが受けられるならトラブルや問題は最小限に抑えられます。
サポートの「有償・無償」「対応時間」「対応方法」を導入前に確認しておきましょう。
クラウドERPの選び方6:費用
クラウドERPによって初期費用や月額利用料は異なります。
月額利用料は基本ライセンスとユーザーライセンスによって決まり、ユーザーライセンスは利用する人数によって左右されます。
導入する企業の規模によってクラウドERPは料金が大きく異なります。
事前に月額料金の見積もりを提示してもらい、それをたたき台にしてランニングコストを検討しましょう。
また、費用だけでなく機能とのバランスも見極めながら最適な製品を選んでください。


クラウドERPを導入して成功した企業事例
クラウドERPを導入して成功した企業事例を紹介します。
株式会社フラッグ
株式会社フラッグは、映像やWebなどさまざまなコンテンツの企画、制作、配信、広告までワンストップで提供しています。
クラウドERP選定のポイントは「シングルインプットによる効率化」「強力なプロジェクト収支管理」「クラウド的設計思想によるコスト削減」の3つです。
クラウドERP「ZAC」導入の結果、以下のことが実現しました。
- クリエイターが数字に対して当事者意識を持つようになった
- ミドルマネジメント層において、数字管理や意思決定が自然と行われるようになった
- 定量的な評価材料を用いた人事考課が行われるようになった
- 同じ職種の部門横断的な改善会議が自発的に行われるようになった
参照:株式会社フラッグ(映像制作・コンテンツ制作業) ZAC導入事例
株式会社キントー
株式会社キントーは洗練されたデザインのキッチン雑貨、インテリア雑貨などの商品企画・開発・販売を手がける会社です。
海外事業の展開にあたり、長年利用していたパッケージソフトや独自ツールでは統合的な管理ができないという課題を抱えていました。
クラウド型ERP「NetSuite」を導入したことで、国内から海外事業を統制できるようになり、人員を増やさないまま大きな売り上げ増加を実現しました。
参照:キントーの海外事業強化を支えたNetSuite 既存の人材のまま前年比150%の売上増に貢献
株式会社メドレー
株式会社メドレーは、テクノロジーを活用して医療ヘルスケア分野の課題解決を目指すベンチャー企業です。
クラウドERPのfreeeを導入することで1,000件を超える人材採用事業の仕訳が短時間で終わり、請求書業務の手間も半減するなどバックオフィスの業務を大幅に効率化。
さらにfreeeとSalesforceをAPI連携することによって、Salesforceに登録した商品情報がfreeeに会計データとして渡され、freee上で請求書作成が可能に。
営業とバックオフィスの業務をスムーズに連携して大幅な効率化を図った好事例です。
参照:定型業務を9割削減、心理的負担も解消した株式会社メドレー。freeeとSalesforceをfreee for Salesforceで連携し、営業とバックオフィスの仕組み化に成功
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